カラースパッタリング装置

脱ガス処理(真空ベーキング処理)とは

脱ガス処理とは、材料の表面や内部に残留、溶存している気体分子を放出する工程です。脱ガス処理にはいくつかの種類がありますが、ここで紹介するのは「真空ベーキング処理」についてです。

真空ベーキング処理は、主に真空状態で使用される「真空チャンバー」などの部品に施されます。真空ベーキング処理の「ベーク」は焼くという意味で、真空状態で加熱できるオーブンのようなものと想像すればわかりやすいでしょうか。

真空ベーキング処理では、炉内を真空にした状態で数百度の高温に加熱します。「真空+高温」という状況下になると、材料に付着した気体分子がガス化されます。付着分子をガス化させることによって、付着物を材料から脱離させることが可能です。これが「脱ガス処理(真空ベーキング処理)」と言われる工程です。

放出ガスの問題点

材料から出てくるガス成分のことを「放出ガス」と呼びます。「アウトガス」と呼ぶ場合もあります。

基本的に脱ガス処理を行う製品というのは、真空中で利用される「真空チャンバー」や「真空部品」などが主です。これらの真空で利用される製品は、脱ガス処理をしていないと、製品の隙間やタップから、もちろん材質の表面からもどんどんとガスを放出してしまいます。真空状態にしようとしても製品からガスが出てきてしまうという状況になるため、高真空にできない問題が発生します。

その他、真空中で利用するような製品ではガスが放出されると、ガスが一点で凝縮してしまう場合があります。凝縮したガスが原因で測定機器や電子機器との干渉が発生する場合があります。 これらの問題が発生する前にガスを抜いてしまうのが脱ガス処理です。

放出ガスの種類

放出ガスは大きく分けて2つの種類があります。

吸着ガス
吸蔵ガス

それぞれの違いについて紹介していきます。

吸着ガス

吸着ガスは材料の表面に付着している分子の塊を指します。吸着ガスは有機物(切削油やグリース類)と無機物(空気中の窒素、酸素、二酸化炭素等)に分けられます。尚、吸着ガスの大部分は水と考えても良いでしょう。

吸蔵ガス

吸蔵ガスは、材料内部に含まれるガス化する不純物を指します。材質で含まれている吸蔵ガスの種類は大きく異なりますが、ステンレス鋼などでは二酸化炭素や水素が含まれています。

一般的に吸蔵ガスの放出量は、多孔質の物質ほど吸蔵ガスの放出量は多くなるのが特徴です。

吸蔵ガスの場合は吸着ガスとは異なり、内部からどんどんとガスが出てくるため、完全にゼロになるまで排出することは難しくなっています。そのため、ある一定のレベルで妥協する必要があります。

放出ガスを抑える方法

放出ガスを抑えるには、次の3つが対策としてあげられます。 ・真空ベーキング処理 ・洗浄 ・表面改質

真空ベーキング処理

先程も紹介したように、放出ガスの対策として代表的なものが「真空ベーキング処理」です。真空ベーキング処理は、真空チャンバーで真空にした空間をヒーターなどを使って加熱する処理です。高温にすることで、材料内部の吸蔵ガスが活性化し、ただ真空にするだけよりも多くのガスを放出できます。

洗浄

製品表面についた切削油や機械油、ホコリなどのゴミなどを洗い流し、ガス化する物質を表面から物理的に取り除くのが「洗浄」の工程です。洗浄でよく用いられる手段が溶剤を使った「超音波洗浄」です。

表面改質

製品の表面の面粗度などを変えることを「表面改質」と呼びます。加工時の面粗度が粗いと表面積が増えてしまいます。表面積が増えてしまうとそれだけ表面に付着している吸着ガスの量は増えてしまうことになります。

そこで、吸着ガスの量を減らすために、できるだけ表面を平らに加工する場合があります。機械的な加工では「バフがけ」「ショットブラスト」、電気的な加工では「電解研磨」、化学的な加工では「化学研磨」、それらを組合わせた「電解複合研磨」などがあげられます。いずれにせよ、金属の面粗度が高くなると鏡のような状態になるため「鏡面仕上げ」や「ミラー仕上げ」と呼ばれます。

真空ベーキング処理の主な利用用途

放出ガスを抑える方法は先程あげた3つがありますが、最終的な処理となると「真空ベーキング処理」となってきます。

主な真空ベーキング処理の主な利用用途としては、

・真空チャンバー・真空ポンプなどの真空製品の脱ガス・脱脂
・電池材料の脱ガス・乾燥
・半導体部品の乾燥・ベーク
・航空・宇宙関連製品の脱ガス

などがあげられます。