ビッグデータ処理・高速通信に適した
フッ素樹脂の表面改質技術
ビッグデータ処理・高速通信に適した
フッ素樹脂の表面改質技術
コミヤマエレクトロンでは、パートナー企業であるFine Solution Co., Ltd.製のイオンビームガンを用いて、特願2021-028964に示す独自の構成と処理を用いることで、フッ素樹脂表面を改質することに成功した。コミヤマエレクトロンでは、フッ素樹脂の中でも、電子基板への適用を目指すために、特にポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene:PTFE)に特化して開発を進めている。当社の表面改質技術はPTFE以外に、ペルフルオロアルコキシアルカン(Perfluoroalkoxy alkane:PFA)にも応用することができる。
処理装置は、真空チャンバ中にFine Solution Co., Ltd.製のファインプラズマガン(Fine Plasma Gun:FPG)を設置し、保持台に乗ったPTFEの表面に向かってFPGによって発生したイオンとラジカルが照射される構成になっている。気体をガス導入部から供給し、FPGでイオンとラジカルを発生させる。表面改質工程は表面を加工する工程と、加工した表面にヒドロキシル基を付与する親水性工程の二つにわかれる。
通常のPTFEと表面改質したPTFEで濡れ性の評価を行った。何もしてないPTFEは水滴を垂らすとPTFEの疎水する特性により水滴を弾く。ここで、処理装置を用いてPTFEの表面にヒドロキシ基を付与させることで水滴が広がり親水していることがわかる。
PTFEの表面を処理前と処理後の表面をSEM(走査型電子顕微鏡 Scanning Electron Microscope)観察した。未処理のPTFEは特に形状が無いが、当社表面改質技術を用いることでPTFEが加工され横に伸びたヒダ状が形成される。
処理装置は、真空チャンバ中にFine Solution Co., Ltd.製のファインプラズマガン(Fine Plasma Gun:FPG)を設置し、保持台に乗ったPTFEの表面に向かってFPGによって発生したイオンとラジカルが照射される構成になっている。気体をガス導入部から供給し、FPGでイオンとラジカルを発生させる。表面改質工程は表面を加工する工程と、加工した表面にヒドロキシル基を付与する親水性工程の二つにわかれる。
表面改質した表面をXPS分析すると、表面改質することで、フッ素と炭素が半分に減り、酸素が増えている。結合エネルギー(Binding Energy)が291eVのCFと292eVのCF2のピークが小さくなり、PTFEの成分であるC2F4が表面から減っている。同時に、C-C、C-O、C=O、COOといった結合が増加する。
O-C=O、(OH)2の結合エネルギーのピークがある530eV付近では、改質前は見られなかったO-C=O、(OH)2のピークが表面改質によって現れている。これは表面にヒドロキシル基が付与できていること示している。さらに、(CF2=CF2)の結合エネルギーのピークがある690eV 付近では、改質前にあった(CF2=CF2)のPTFEの成分のピークが、表面改質によって大きく減少する。
表面改質したPTFEの低接触角の寿命は、プロセス条件に変化するが、48~72時間後においても10度以下を実現している。
表面改質したPTFEシートに電子基板で行われている通常の銅の鍍金工程(脱脂処理、無電解鍍金処理、電解鍍金処理)と同じ工程を行う。PTFEに銅鍍金した銅膜を引きはがしたときの裏面をSEMで観察した。表面処理したPTFEの形状が銅膜に転写していることから、PTFEと銅膜がしっかり密着していることがわかる。さらに銅膜とPTFEの断面を観察すると、隙間なく密着している。Rz(最大高さ)は650 nm程度であり、Ra(算術平均粗さ)に換算すると0.2 µm程度になる。鍍金前の表面改質したPTFE表面をレーザー顕微鏡で粗さを評価した結果とほぼ同程度である。
ヒダ状の凸の数は1μm当たり4本~5本である。
ヒダ状の凸の数が多く、凸の高さが高いほど、ピール強度は高くなる。ピール強度はヒドロキシル基を付与量だけで決まるものではなく、表面の物理的形状の影響も受けている。
ヒダを大きく延ばして銅鍍金すれば、表面の機械的なアンカー効果が向上し、密着度を向上させることができる。この表面は電子基板には適さないが、電子基板以外の機械用部品への適用が見込まれる。
コミヤマエレクトロンでは、表面改質の状態を把握するためにSEM・FE-SEM観察などを積極的に行っている。表面改質の定量化や全数SEM観察に代わる簡易評価の技術確立などの課題に取り組んでいる。